さよなら・・・冷蔵庫くん(14歳)
結婚して以来、
14年間に渡って我が家の食生活を支くれた、
冷蔵庫くんとお別れの日がやってきました。
このパステルなブルー、
そして富士通製の冷蔵庫って、
今はもう売ってないそうで、
電気店の店員さんに、
「え? 富士通製? 富士通が冷蔵庫作ってましたっけ? マジで?」
と言われたくらい、今となっては年代物の冷蔵庫くんでした。
娘たちは冷蔵庫くんに感謝状を書いてくれました。
親バカで恐縮ですが、
思いやりがあってユニークな子に育ってくれたな、
と感激しました。
「そうだ、君たちはこの冷蔵庫のおかげで、
そこまで大きく育つことが出来たんだよ」
家電を買いかえる時って、
普通はワクワクすると思うのですが、
僕は朝から寂しい気持ちでいっぱいでした。
だって、この冷蔵庫には新婚時代から、
たくさんの思い出が詰まっているから・・・。
新婚時代は2人きりの生活にはこの冷蔵庫は大きく、
中がスカスカでした。
当時は仕事も収入も少なくて、大変でした。
少しずつ収入が増えて、
冷蔵庫にビールがある時はうれしかったな~(笑)
そのうち子どもが生まれて、
中身もだんだん増えてきて、
食べ物だけでなく、
熱出た時用の熱さまシート、
お医者さんでもらった薬なども入るようになりました。
3人の娘たちが、
それぞれ生まれてから少しずつ成長して、
一番下の冷凍庫、真ん中の野菜室、一番高いの冷蔵庫と、
下から順番に冷蔵庫のドアを開けられるようになると、
それだけで感動したものです。
「私のアイス、誰が勝手に食べたん!」
と娘たちがケンカし、
その争いに時々、妻もガチで参戦したことも、
とても良い思い出です。
4年前から主夫になり、
料理の楽しさ、お菓子作りの楽しさを知る過程を、
サポートしてくれたのも、
この冷蔵庫くんでした。
昼過ぎ、電気屋さんが新しい冷蔵庫を持ってきました。
運送屋さんが冷蔵庫くんを家から運び出そうとした時、
「やっぱりキャンセルします!
その冷蔵庫を持って行くのはやめてください!」
と言いたい気分をグッとこらえて、
見送りました。
-----------------------
人はよく、
「変わりたい!」
と思ったり、言ったりします。
僕もよく、
「今の自分じゃイヤだ! 変わりたい!」
と思ってきたし、
変わるためにいろんなことをやってきました。
でもなかなか変われず、
その原因を自分の心の中にある、
「勇気のなさ」
とか、
「不安」
とか、
「恐怖」
といった、
どちらかというとネガティブな感情に求めてきましたが、
実は、
「愛着」
とか、
「愛情」
といった感情も、
自分を変えられない原因になっているんだな、
と、今回の冷蔵庫買い替えの件で感じました。
「自分が変われない原因に愛着とか愛情があると仮定するなら、
変われないダメな自分に愛情を注いでやってもいいんじゃないか?」
などという、よく分からない理屈が頭をよぎりました。
『愛着、愛情があるから手放せない』
それは醜くもあり、愛おしくもある、
人間のサガなんだと思います。
そしてこのサガに、
今後も振り回されまくって、
僕は生きて行くことでしょう。
-----------------------
冷蔵庫くんが積まれたトラックが、
「♪ドナドナド~ナ~、ド~ナ~♪」
と走り去った後、
「・・・彼(冷蔵庫くん)は、この後どうなるんだろう・・・」
と、独りごちると、妻は、
「さあ、だいぶ古いし、廃棄処分じゃない?」
と、あっさりと言い放ち、
うれしそうにニコニコしながら、
新しい冷蔵庫に、食材を入れていました。
鼻水をすすりながらそれを手伝っていると、
妻があきれて言いました。
「あんた、冷蔵庫でこれだけ落ち込んで!
子どもたちが嫁ぐ時はどうなるんよ!」
「多分、立っとれんと思う」
コメントを投稿するにはログインしてください。